金利・為替・景気

前章までに出てきた割引率 r。あれは何だったのか。

株価の正体で PER = 1/(r − g) を導いたとき、 r は「求める利回り」として天下り的に置いた。 商品の中身では、 債券価格を動かすのが y だと見た。 この章では、その r と y がどこから来るのかを扱う。

結論を先に書く。金利は、あらゆる資産価格の分母に入っている。 だから金利が動くと、株も債券も不動産も、 個別の事情とは無関係にまとめて動く。

金利は、あらゆる資産価格の分母に入っている。 だから金利が動けば、企業の業績が何ひとつ変わらなくても株価は動く

この章で扱う経路の全体図。中央銀行が直接動かせるのは 左端の1つだけで、そこから右へ伝わっていく。 上の経路は割引率 rを通って分母に効き、 下の経路は景気を通って分子(利益 E)に効く。 2つは同じ向きに働くが、効くまでの時間が違う—— 上は即座に、下は数四半期から1年以上かけて。 破線は「期待」でつながっている部分で、 政策金利が動かなくても見通しが変われば長期金利が動く理由になる。

なぜ金利がすべての出発点なのか

割引率 r は、単一の数字に見えて、実は分解できる。

割引率の分解 r = 無リスク金利 + リスクプレミアム

無リスク金利は、リスクを取らずに得られる利回り。 実務では国債利回りを使う。 リスクプレミアムは、 リスクを引き受ける見返りとして上乗せで要求する分。

この分解が効いてくるのは、次の理由による。

  1. 国債で確実に年x%得られるなら、 リスクのある投資にはそれ以上を要求する。 でなければ国債を買えばいい
  2. だから無リスク金利は、あらゆる要求利回りの下限として働く
  3. 無リスク金利が上がれば、リスクプレミアムが変わらなくても r は同じだけ上がる
  4. r は割引現在価値の分母にある。 分母が大きくなればすべての資産の理論価格が下がる

4番目が本章で最も重要な帰結。 金利上昇は、企業の業績が何も変わらなくても株価を下げる。 これは市場の気まぐれではなく、割引現在価値の式の構造そのもの。

政策金利から長期金利へ

「金利」と一言で言うが、期間ごとに別の金利がある。 そして中央銀行が直接動かせるのは、いちばん短いところだけ。

日本銀行の枠組み

日本銀行が操作目標としているのは無担保コールレート(オーバーナイト物)。 金融機関どうしが担保なしで翌日返済の資金をやり取りする金利で、 期間としては最短にあたる。

2026年6月16日の金融政策決定会合で、 日銀は無担保コールレート(オーバーナイト物)を 1.0%程度で推移するよう促すことを決定した(2026年6月17日から適用)。 同日以降、2026年7月31日の会合でも据え置かれている。

この数字は必ず古くなる。 政策金利は会合ごとに変わりうる。 本ページ執筆時点(2026年9月2日)では2026年7月31日会合の決定が最新で、 次回会合は2026年9月17〜18日に予定されている。 読んでいる時点の最新値は 日本銀行の金融政策決定会合の公表資料 で確認すること。 以下で扱うのは数値ではなく波及の構造のほうで、 そちらは政策金利が何%でも変わらない。

枠組みが変わってきた経緯

日本の金融政策は2013年以降、大きく変わり続けてきた。 構造を理解するには、何が導入され、何が終わったかを押さえておくとよい。

時期決定中身
2013年1月22日物価安定の目標 消費者物価の前年比上昇率2%を物価安定の目標として導入
2013年4月4日量的・質的金融緩和(QQE) 操作目標を金利からマネタリーベースへ変更。年間60〜70兆円増加させる。長期国債・ETF・J-REITを買い入れる
2016年1月29日マイナス金利 日銀当座預金を3層に分け、一部に−0.1%を適用(2016年2月16日開始の積み期間から)
2016年9月21日イールドカーブ・コントロール(YCC) 短期を−0.1%、10年物国債利回りを0%程度に誘導。操作目標が量から金利へ戻る
2024年3月19日枠組みの見直し マイナス金利を解除。YCCを撤廃。ETF・J-REITの新規買入れを終了。短期金利を主たる政策手段とする
2025年9月19日ETF・J-REITの処分 保有するETFを簿価で年約3,300億円、J-REITを年約50億円のペースで売却する方針を決定

押さえるべきは2024年3月19日。 ここで YCC が撤廃され、 長期金利が市場で決まる状態に戻った。 2016年から2024年までの8年間、10年金利は日銀が誘導していたので、 その期間のイールドカーブは市場の予想を素直には表していない。 過去のデータを見るときは、この点を頭に入れておく必要がある。

また、マイナス金利下の3層構造の当座預金は2024年3月に廃止され、 現在は超過準備にプラスの金利が適用されている。

短期から長期への波及

中央銀行が動かすのは翌日物。だが投資家が気にするのは10年金利。 この間をつなぐのが期待。

純粋期待仮説(長期金利の基本形) n年金利 ≈ 今後n年間の短期金利の予想平均 + タームプレミアム
  1. 10年間お金を貸す方法は2つある—— 10年債を買うか、1年債を10回転がすか
  2. この2つの期待リターンが大きく違えば、 有利なほうに資金が動いて差が縮む(裁定)
  3. だから10年金利は、今後10年の短期金利の予想平均に近づく
  4. ただし10年債は途中で金利が動くと値段が動く(デュレーションのリスク)。 その分の上乗せがタームプレミアム

これが実務的に意味するのは、 長期金利は「今の政策金利」ではなく「将来の政策金利の予想」を映すということ。 利上げが実施されても、それが完全に織り込み済みなら長期金利は動かない。 逆に、政策金利が据え置かれても将来の見通しが変われば長期金利は動く。

イールドカーブ

残存期間ごとの金利を並べて線で結んだものがイールドカーブ(利回り曲線)。 日本では財務省が国債金利情報として毎営業日公表している (1〜10年、15・20・25・30・40年の15本)。

3つの形を同じ縦軸で重ねたもの(生成データ)。 ボタンで選んだ形が濃い線、残りの2つは薄い線で残してある。 比べる相手が消えないので、傾きの違いだけが動いて見える。 横軸は残存期間。3本とも同じ縦軸なので、 逆イールドが「短期が高い」のではなく 長期が短期より低い状態だと分かる。

形意味していること
順イールド
(右上がり)
通常の形。長く貸すほど高い金利を要求する。今後金利が上がると予想されているか、タームプレミアムが正であることを示す
フラット 期間による差が小さい。利上げ局面の終盤や、景気の転換点で現れやすい
逆イールド
(右下がり)
短期金利のほうが高い。市場が将来の利下げを予想していることを意味する。利下げが予想されるのは、景気が悪化すると見られているとき

なぜ逆イールドが注目されるのか

逆イールドが景気後退の先行指標になるという議論には、学術的な出発点がある。

なぜ効くのかの理屈は、上で見た期待の話から出る。 逆イールドは「市場が将来の利下げを予想している」状態で、 利下げが予想されるのは景気悪化が予想されるとき。 つまり逆イールドは景気後退を引き起こすのではなく、 多数の市場参加者の予想を集約した表示にすぎない。

この指標の限界——ここは正直に書く

逆イールドは有名になりすぎて、限界が語られないことが多い。 実際には無視できない問題が4つある。

まとめると、逆イールドは 「市場参加者の多数が景気悪化を予想している」ことの表示としては正しい。 だが予想が当たるかどうかは別問題で、 直近の事例はまさにそこを外している。 指標として使うなら、予測ではなく市場心理の温度計として扱うほうが実態に近い。

名目金利と実質金利

ここまでの「金利」は名目金利。 だが投資家にとって意味があるのは、物価上昇を差し引いたあとの増え方。

フィッシャー方程式(厳密形) (1 + i) = (1 + r) × (1 + πe)
近似形(実務ではこちら) i ≈ r + πe   (名目金利 ≈ 実質金利 + 期待インフレ率)
近似が成り立つ理由と、崩れる条件
  1. 厳密形を展開すると 1 + i = 1 + r + πe + r·πe
  2. 両辺から1を引くと i = r + πe + r·πe
  3. 最後の r·πe は小さい数どうしの積。 r=2%、πe=2% なら 0.04% にすぎない
  4. だから普通は無視して i ≈ r + πe と書く

崩れるのは高インフレのとき。 r=5%、πe=30% なら交差項は1.5%で、無視できない。 インフレ率が高い国の金利を議論するときは厳密形を使う。

なおフィッシャー方程式は Irving Fisher の The Theory of Interest(1930年)で知られるが、 Fisher 自身は Appreciation and Interest(1896年)で すでに同じ関係を述べており、さらに先行する議論もある。 「Fisher (1930)」は便宜的な帰属だと理解しておくとよい。

重要なのは πe が期待インフレ率であること—— 実績ではなく、これから起きると人々が思っている率。 観測しにくいが、日本では推定する手段がある。

ブレークイーブン・インフレ率(BEI)

物価連動国債は、物価に応じて元本が増減する国債。 これと普通の国債の利回りの差が、 市場が織り込んでいる期待インフレ率にあたる。

BEI = 普通国債の利回り − 物価連動国債の利回り

財務省の公表資料によると、2026年8月20日時点で 10年物の名目国債利回りが2.792%、物価連動国債の利回りが0.823%、 その差である10年BEIは1.969%だった。

つまりこの時点の市場は、今後10年の平均インフレ率を約2%と見ていたことになる。 名目金利2.792%のうち、約2%はインフレ見合いで、 実質的な金利は0.8%程度という読み方ができる。

金利上昇が株価に効く2つの経路

金利が上がると株価が下がる、とよく言われる。 だがその経路は1つではなく2つあり、両方が同じ向きに働く。

2つの経路は時間差で効く。 経路1は金利が動いた瞬間に価格へ織り込まれる。 経路2は実体経済を経由するので、数四半期から1年以上かかる。

なぜグロース株のほうが大きく下がるのか

ここが実務的に最も使える帰結。 債券のデュレーションと同じ理屈が、株式にも当てはまる。

  1. グロース株は、利益の大部分が遠い将来にある。 今の利益は小さく、10年後・20年後に大きくなることを期待されている
  2. 商品の中身で見た通り、 価格を r で微分すると、各キャッシュフローに t が掛かる
  3. したがってキャッシュフローが遠いほど、金利感応度が高い
  4. グロース株は実質的にデュレーションの長い債券のように振る舞う

同じことは PER = 1/(r − g) からも直接出る。

同じ1%の金利上昇でも

成熟企業:r=8%、g=1% → PER = 1/0.07 = 14.3倍
r が9%になると → 1/0.08 = 12.5倍。 下落率 12.5%

成長企業:r=8%、g=6% → PER = 1/0.02 = 50倍
r が9%になると → 1/0.03 = 33.3倍。 下落率 33.3%

同じ1%の上昇で、下落率に2.7倍の差が出る。 分母 (r−g) が小さいほど、 同じ幅の変化が相対的に大きな変化になるため。

動かして確かめる

金利変化が成長性の違う企業に与える影響

+0.00%
8.0%
低成長 g=1% —
中成長 g=4% —
高成長 g=6.5% —

金利の変化に対する理論株価の変化率。 成長率が高い(分母が小さい)ほど、線が急になる。

この計算は PER = 1/(r−g) をそのまま使っている。 株価の正体で見た通り、 g が r に近づくと式は発散するので、 高成長側の数字は過大に出やすい。 方向と大小関係を見る道具であって、 個別銘柄の目標株価を出す道具ではない。

為替

為替レートを説明する理論は2つある。 どちらも長期では方向性を示すが、短期ではほとんど説明力がない。 この「効かなさ」自体が重要な知識になる。

購買力平価(PPP)

同じものは、どこで買っても同じ値段になるはず——という考え。

購買力平価(相対的PPP) 為替レートの変化率 ≈ 自国の物価上昇率 − 相手国の物価上昇率
  1. 同じ財が日本で100円、米国で1ドルなら、理論上は1ドル=100円
  2. もし1ドル=150円なら、米国で買って日本で売れば儲かる
  3. この取引が為替と物価を動かし、差を縮める
  4. したがってインフレ率の高い国の通貨は、長期的に減価する

理屈は明快だが、現実には成り立ちが悪い。 Rogoff が1996年の展望論文 "The Purchasing Power Parity Puzzle"(Journal of Economic Literature 34(2), 647–668) で整理した通り、PPPからの乖離が半分に縮むまでに3〜5年かかる というのが当時の研究の一致した見方だった。

「半減期3〜5年」の意味を噛み砕く。 今日の為替が理論値から20%ずれているとして、 それが10%まで戻るのに3〜5年かかるということ。 投資判断の時間軸としては、ほぼ使えない。

なぜこれが「パズル」と呼ばれるかというと、 この遅さを説明できる理論がなかったから。 貿易障壁や輸送費で説明しようとしても、 3〜5年もかかる理由にはならない。 なおこの3〜5年という数字は Rogoff 自身の推計ではなく、 当時の研究群の「一致した見解」として紹介されたもの。

金利平価

もう1つは金利の差で説明する考え。こちらは2種類ある。

カバー付き金利平価(CIP)カバーなし金利平価(UIP)
内容 先物為替で為替リスクを消したとき、
両通貨の運用利回りが一致する
金利が高い通貨は、
その差だけ将来減価する
性質 裁定式。取引で強制される 予想についての仮説。強制力がない
成り立つか おおむね成立。ただし2008年以降ずれが残る 成り立たない。しかも符号が逆に出る

UIP が成り立たないことはフォワード・プレミアム・パズルと呼ばれ、 Fama が1984年の論文 "Forward and spot exchange rates"(Journal of Monetary Economics 14(3), 319–338) で明確に示した。

  1. UIPが正しければ、高金利通貨は将来下がるはず
  2. ところが実際のデータでは、高金利通貨はむしろ上昇する傾向が見られた
  3. つまり金利差を取りにいくと、為替でも得をしてしまう
  4. これがキャリートレード(低金利通貨で借りて高金利通貨で運用する)の 収益の源泉になっている

キャリートレードの収益はタダではない。 平常時は少しずつ儲かるが、市場が混乱すると ポジションの巻き戻しで一気に大きく損する。 リスクの測り方で見た 「普段は小さく勝ち、稀に大きく負ける」戦略の典型例で、 シャープ・レシオが高く出る一方、 歪度が大きく負に偏っている。 円は長らく低金利側だったため、 円が借り手側の通貨として使われ、 巻き戻し時に急激な円高が起きる構図が繰り返されてきた。

CIP のほうも、2008年の金融危機以降は完全には成立していない。 Du, Tepper & Verdelhan(2018) "Deviations from Covered Interest Rate Parity"(Journal of Finance 73(3), 915–957) が示した通り、クロスカレンシー・ベーシスと呼ばれるずれが恒常的に残っている。 銀行の規制強化でバランスシートを使う裁定にコストがかかるようになったことが 主な説明とされる。市場の構造で見た 裁定の限界が、為替市場でも観測されている例。

なぜ短期の為替は説明できないのか

円安・円高が日本企業に与える非対称な影響

「円安は日本経済にプラス」という説明は、もはや単純には成り立たない。 構造が変わったため。

企業ごとに正反対に効く

円安のとき円高のとき
輸出企業
(自動車・機械など)
プラス。外貨建て売上の円換算額が増える。海外での価格競争力も上がる マイナス
輸入企業
(電力・食品・小売など)
マイナス。原材料・エネルギーの調達コストが上がる プラス
海外に子会社を持つ企業 換算差で見かけの利益が増える。ただし現金が入るとは限らない 逆
内需・非製造業 コスト増だけが効く。価格転嫁できるかで結果が分かれる コスト減

想定為替レートを確認する

企業の業績予想は「1ドル=○円」という前提の上に立っている。 この前提は日銀短観で調査・公表されている。

2026年6月調査(2026年7月1日公表)では、 大企業・製造業の2026年度の想定為替レートは1ドル=151.49円 (上期151.60円、下期151.38円)だった。 全規模・全産業では152.57円。

使い方はこう。実際のレートが想定より円安なら、 輸出企業には上振れ余地がある。 逆に想定より円高なら、会社予想は達成が難しくなる。 決算発表前に見ておくと、業績修正の方向が読みやすくなる。

出典:日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」 2026年6月調査(2026年7月1日公表)「輸出企業の事業計画の前提となっている想定為替レート」。 短観は4月初・7月初・10月初・12月央に公表される。

国全体で見た構造の変化

個別企業の話とは別に、日本経済全体の構造が変わっている。 財務省・日本銀行の国際収支統計を見ると、はっきり分かる。

年経常収支貿易収支第一次所得収支
2004年19.7兆円14.4兆円10.3兆円
2005年18.7兆円11.8兆円11.9兆円
2011年10.4兆円−0.3兆円14.6兆円
2022年11.4兆円−15.5兆円35.0兆円
2025年32.2兆円−0.6兆円41.8兆円

2つの別々の出来事が起きている。混同しやすいので分けて書く。

  1. 2005年——第一次所得収支が貿易収支を初めて上回った。 このとき貿易収支はまだ黒字だった。 つまり原因は貿易の崩れではなく、 海外に積み上がった資産から入る配当・利子が増えたこと
  2. 2011年——貿易収支が初めて赤字になった。 震災後のエネルギー輸入増が主因。これは2005年の6年後の、別の出来事
  3. 2025年には第一次所得収支41.8兆円が経常収支32.2兆円を上回る。 日本の稼ぎ頭は、もはや輸出ではなく対外投資の収益

この構造変化が意味するのは、 円安が国全体に与える効果が昔と違うということ。

第一次所得収支は外貨建ての受取が多いので、 円安になれば円換算額は増える。だがその多くは 現地で再投資され、円に換えられない。 一方、輸入物価の上昇は国内の家計と企業に即座に効く。 「円安メリット」が統計上の数字ほど実感を伴わないのは、この非対称による。

景気循環と業種のローテーション

景気の局面によって、上がりやすい業種が変わる。 理由は需要の性質が業種ごとに違うことにある。

景気敏感(シクリカル)ディフェンシブ
典型的な業種 鉄鋼、化学、機械、自動車、海運、証券、不動産 食品、医薬品、電力・ガス、日用品、鉄道
需要の性質 先送りできる。景気が悪ければ買い替えを待てる 先送りできない。不況でも食べるし薬は飲む
固定費の比率 高いことが多い(設備産業) 相対的に低い
利益の振れ 大きい 小さい

上の表の業種を、景気後退期の営業利益の振れ幅で並べたもの (生成データ。実際の企業の数値ではなく、 表の「先送りできる需要か」「固定費が高いか」から作った説明用の値)。 先送りできる需要の業種ほど棒が長い。 ディフェンシブ側が短いのは、不況でも食べるし薬は飲むから。

2行目が本質。「先送りできる需要かどうか」が 景気敏感度をほぼ決めている。 3行目はそれを増幅する——固定費が高いと、 売上が少し減るだけで利益が大きく減る(オペレーティング・レバレッジ)。

業種ローテーションを投資判断に使うときの注意。 株価は景気に先行するので、 「今が不況だからディフェンシブ」と考えると常に遅れる。 景気の底で買われ始めるのは景気敏感株のほうで、 統計が改善を示す頃には織り込みが終わっていることが多い。

さらに、市場の構造で見たアノマリーの話が効いてくる。 この程度に知られたパターンは、すでに価格に入っていると考えるのが出発点。 知識としては要るが、これだけで勝てる類のものではない。

インフレが企業ごとに与える差

インフレは全企業に一律に効かない。 差を作るのは価格転嫁力。

  1. インフレはまずコスト側に来る——原材料、人件費、エネルギー
  2. 販売価格を同じだけ上げられれば、利益率は保たれる
  3. 上げられなければ、コスト増がそのまま利益の減少になる
  4. したがって価格を上げても客が離れない企業だけが、 インフレを通過させられる

価格転嫁ができる条件は、おおむね次のいずれか。

よくある誤解 インフレ局面では株はインフレヘッジになる
実際 価格転嫁できる企業の株はヘッジになる。できない企業は、コスト増と割引率上昇の両方を被る。「株」で括ると答えが出ない

消費者物価指数は総務省統計局が公表している。 2026年時点の基準年は2025年=100で、 2020年基準から改定されている。 長期の系列を比較するときは基準改定に注意する。 総務省統計局 消費者物価指数。

なお日本で「コア」と呼ぶのは生鮮食品を除く総合で、 米国の core CPI(食品とエネルギーを除く)とは定義が違う。 日本で食品・エネルギーを除いたものは「コアコア」と呼ばれる。 海外の記事と比べるときに取り違えやすい。

確認

日銀が政策金利を据え置いた。しかし発表後、10年国債利回りが大きく上昇した。 何が起きたと考えられるか。

金利が1%上昇した。PER50倍の高成長企業とPER12倍の成熟企業、 理論株価への影響はどう違うか(どちらも割引率8%、成長率はPERと整合的とする)。

「日本は貿易赤字なのに経常収支は大きな黒字」。これはなぜか。

この章のまとめ